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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)95号 判決

上告人

大阪市

被上告人

佐藤菊與

外三名

主文

本件上告を棄却する。

上告の費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告理由は添附の別紙記載のとおりであつて、これに対する判断は次のとおりである。

(中略)

第二点について。

論旨は、上告人が原審で本件借地権の價格は賃料変革のため圧迫せられると主張したのに対し、原審にはこの点に関する判断を遺脱しているというのであるけれども、都市計画施行の結果或は借地料が昂騰することもあるかも知れないが、同時にその土地を借地して得られる利益もまた增大するかも知れないのであつて、にわかに借地権の價格の將來について予測することはできないのである。將來の事実は買收時期現在の價格に影響のあること明白な限度においてのみ考慮せられるべきものであつて、論旨のような不確実な事実はこれを考慮に入れる必要はないのである。若し明白に上告人の主張するような事実が予想せられるならば、自ら現在の價格にも影響し鑑定人の鑑定價格も影響を受けるのであつて、原審が鑑定人の鑑定を採用するに際し一々論旨のような將來の予想を説明する必要はない。論旨は理由がない。

(中略)

第七点について。

論旨は、原審が被上告人の本件借地権の取得價格について審理しなかつたのは違法であるというのであるけれども、取得價格は取得当時の個人的事情その他各種の事情によつて定まるのであつて、必ずしも客観的價格をあらわしているものではなく、現在の價格とは直接に関係がないのであるから、この点について原審は審理し、判示する必要もないのであつて、論旨は理由がない。

よつて本件上告に理由がないので民訴第四〇一條、第九五條、第八九條を適用して主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

(別紙上告理由省略)

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